【技術情報】二軸押出機のチップクリアランス

技術情報2024.11.01

チップクリアランスとは

押出機の溶融混練における分散混合は主にチップクリアランス部を通過することによるせん断応力の作用が主な要素であると考えられています。チップクリアランスとは、スクリュ山頂部とバレル内面、もしくは、一本のスクリュ山頂部と他方のスクリュ間のクリアランスのことを意味します。押出機における溶融混練において、この最適なチップクリアランスの設計がとても重要です。

 

 

せん断応力

小さなクリアランスでは、より高いせん断応力がかかりやすくなります。これにより分散性が向上しますが、材料によっては熱劣化や局所的な発熱を引き起こす可能性があります。大きなクリアランスは、せん断応力が減少するため、粒子やフィラーの分散が均一になりにくくなる傾向があります。

 

 

塑性変形・粘性消散

二軸押出機の場合、樹脂の溶融においては、押出機のバレルに設置されるヒーターからの伝熱だけでなく、押出機の混錬による塑性変形による発熱や粘性消散による発熱、摩擦による発熱の影響が大きいです。塑性変形は、流動中の材料がクリアランス部で大きなせん断応力を受けることで発生します。粘性消散は高せん断応力がかかるような流体流動において顕著に表れます。チップクリアランスが小さくなる場合、塑性変形による発熱や粘性消散による発熱も大きくなります。

 

セルフクリーニング性能

チップクリアランスが小さくなると、バレルやスクリュに付着した材料を効率的にかきとることができるため、セルフクリーニング性はとてもよくなります。セルフクリーニング性が良くなることで、樹脂の長時間の付着による熱劣化を防止することやバレルからのヒーターによる伝熱効率を上げることができます。

 

流入流量

チップクリアランスが大きいと、そのクリアランスへ流入する材料は多いです。一方で、チップクリアランスが小さいと、クリアランスへ流入する材料は少なくなります。

 

まとめ

押出機の溶融混練において、最適なチップクリアランスの設計は、分散混合性能や熱履歴、セルフクリーニング性能に大きく影響します。小さなクリアランスでは高いせん断応力がかかり、分散性が向上します。ただし、塑性変形による発熱や粘性消散による発熱、摩擦による発熱を引き起こしやすく、材料の熱劣化や局所的な発熱のリスクには留意が必要です。一方で、セルフクリーニング性が向上するため、バレルやスクリュに材料が付着しにくく、長時間の運転でも熱劣化を抑制することが可能です。逆にクリアランスが大きいと、材料の流入が多くなるものの、せん断応力が低下し、分散性が低下する可能性があります。したがって、材料の特性や混練要求に応じたチップクリアランスの設計が、効率的で安定した押出プロセスを実現する鍵となります。

 

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